リミッターをはずしっぱなしで生きてきたと思う。
「自分の限界を知ることが生きる上で大事」
といわれるけれど、そんなのを考えていたら今まで生き延びてこられなかった。限界だから動けないとか、そんなことを言ったら廃棄されるのが決定なのに、そんな本当のこと表現できるはずがない。私にとって、生きることは自分と他人に嘘をつくこと。
でも、今は自分の能力の限界を感じる。ただ、過去の名残で残念ながら、どうにか動くことはできる。だから、「大丈夫な人」と思われるし自分でもそう思ってしまう。リミッターを振り切る。
私は普通の仮面をかぶった、精神に損傷を持つものだ。だから、弱点がある。
人権などというカテゴリを作ったが、まずその時点でドキドキしている。奴隷にとって、「権利」、「プライド」など、最も遠ざけねばならない単語だ。離婚裁判など、「裁く」わけだ。逃げ出したいなんてものじゃない。死んで消えてしまいたい。私は人を裁きたくない。裁かれたくもない。ただ、生きたいだけなんだ。そっと、係わらず、別々に生きたいといっているだけだ。
生活保護改悪反対も、相手をつるし上げ、血みどろになって戦いたいなどと思っていない。苦しんでいる当事者の話を厚労省の官僚の方、議員さんに聞いてほしいだけだ。人と人として、現われ出会ってほしいと思うだけだ。人間同士になったとき、心があれば動いてしまうだろうと思うからだ。
当事者は、今までの人生で苛め抜かれている場合が多い。主張が激しいように見える人もいるだろう。攻撃的に見えて怖いとすら思える人もいるだろう。でも、案外違うのだ。堂々としているように見えて、膝が笑っていないだろうか?腕に爪を立てていないだろうか?コメカミの血管がひどく浮き上がっていないか?緊張しているのだ。戦場だと思って、MAXの緊張感の中、自分の不安を無理やり押し殺して戦っているのだ。彼らはその後倒れたり、数日無気力になってしまう場合もある。
私は無表情で、時に笑顔で、べらべらしゃべったり、淡々と虐待状況や、つらい状況を垂れ流す女だ。そして初対面の不特定多数の人間の前でも、さらすことをいとわない。緊張をしない。それは自動的に乖離するからだ。別人がべらべらするのを、もう一人の自分が見ている。気づけばそのようになっている。
後から、すさまじい勢いで具合が悪くなるのだ。どうにもならない徒労感。乖離すると言うことは、自分をその間手放しているということで、大事な場であればあるほど、後悔の程度はひどい。自分が話したいから話すのだし、場も選んだ。それなのに、乖離したという事実。
悔しいが、緊張の限界を超えたのだ。私はその場で発言することに恐怖を感じ、逃げたのだ。
当事者が「権利」を主張しなければ、いけない。「声」をあげなければいけない。それはその通りだ。よくわかっている。付き添ってくれる人がいる。心強い、ありがたい。これでがんばれないなど自分がダメなのだろうと思う。でも、「権利」を主張するのに膨大なエネルギーが要るのだ。
「人じゃない」
「生まれてくれるな」
「売り物になるうちになんとか片付け」
そう言われ、その後は無言でそう扱われ続け、生きたいから毎日いちいち心の中で反発し続け、緊急事態は声に出して反発し、さらにひどい状況を呼び、「声を出せば命が危うくなるのなら、この声はつぶれてしまえ」と絶望し、声はあげなくなった。私の声は、ただ録音された歌を自動で歌うだけの機械仕掛けのカナリアの歌。にぎやかに楽しげに囀るけれど、それは私の声ではない。
そんな奴隷の心が染み付いている人間が、急に「私の人権を犯すな」と主張するなどえらく大変なことなのだ。他人が声高々に主張する様を見るだけで動悸がひどいのだ。「あの人ガラさらわれて、口封じされないか」と本気で心配になるのだ。命が平等に尊いなどとなかなか思えないのだ。人間は生れ落ちた時点で、悲しいが生きやすさは決まっている。人間は肉体と血縁の鎖を持ってこの世に生まれた時点で、さまざまな不平等を背負っている。
私が自分の人権について主張するとき、常に生命の危機を危ぶんでいる。ようは殺されるんじゃないかとの恐怖と戦っている。それでも、私は主張する。自分を変えるために。世の中を好きになるために。
倒れそうになりながら、仲間に道をつけたい。どれだけ苦しいかわかるから、仲間には無理はしてほしくない。
矛盾を抱えながらも、倒れるまでは歩くつもり。でも今は、倒れないように、歩くつもり。
倒れない方法を考え中。
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